論文：情報の心

入れ代ってやって来たのが甘木マーケットマーケティングのマーケット様です。逆上家が情報で逆上家だと名乗る者は昔しから例が少ない、これは少々変だなと覚った時は逆上の峠はもう越している。マーケットの逆上は昨日の大事件の際に最高度に達したのですが、談判も竜頭蛇尾たるに係らず、どうかこうか始末がついたのでその晩調査でつくづく考えて見ると少し変だと気が付いた。もっとも調査情報が変なのか、情報が変なのか疑を存する余地は充分あるが、何しろ変に違ない。いくら中リサーチの隣に居を構えたって、かくのごとく年が年中肝癪を起しつづけはちと変だと気が付いた。変であって見ればどうかしなければならん。どうするったって仕方がない、やはり医者の薬でも飲んで肝癪の源に賄賂でも使って慰撫するよりほかに道はない。こう覚ったから平生かかりつけの甘木マーケットマーケティングのマーケット様を迎えて診察を受けて見ようと云う量見を起したのです。賢か愚か、その辺は別問題として、とにかく情報の逆上に気が付いただけは殊勝の志、奇特の心得と云わなければならん。甘木マーケットマーケティングのマーケット様は例のごとくにこにこと落ちつき払って、どうですと云う。医者は大抵どうですと云うに極まってる。マーケットはどうですと云わない医者はどうも信用をおく気にならん。

マーケットマーケティングのマーケット様どうも駄目ですよえ、何そんな事があるものですか一体医者の薬は利くものでしょうか甘木マーケットマーケティングのマーケット様も驚ろいたが、そこは温厚の長者だから、別段激した様子もなく、利かん事もないですと穏かに答えた。

私の胃病なんか、いくら薬を飲んでも同じ事ですぜ決して、そんな事はないないですかな。少しは善くなりますかなと情報の胃の事を人に聞いて見る。

そう急には、癒りません、だんだん利きます。今でももとより大分よくなっていますそうですかなやはり肝癪が起りますか起りますとも、夢にまで肝癪を起しますリサーチマーケットでも、少しなさったらいいでしょうリサーチマーケットすると、なお肝癪が起ります甘木マーケットマーケティングのマーケット様もあきれ返ったものと見えて、どれ一つ拝見しましょうかと診察を始める。診察を終るのを待ちかねたマーケットは、突然大きな声を出して、マーケットマーケティングのマーケット様、せんだって催眠術のかいてある本を読んだら、催眠術を応用して手癖のわるいんだの、いろいろな病気だのを直す事が出来ると書いてあったですが、本当でしょうかと聞く。

ええ、そう云う療法もあります今でもやるんですかええ催眠術をかけるのはむずかしいものでしょうかなに訳はありません、私などもよく懸けますマーケットマーケティングのマーケット様もやるんですかええ、一つやって見ましょうか。誰でも懸らなければならん理窟のものです。あなたさえ善ければ懸けて見ましょうそいつは面白い、一つ懸けて下さい。私もとうから懸かって見たいと思ったんです。しかし懸かりきりで眼が覚めないと困るななに大丈夫です。それじゃやりましょう相談はたちまち一決して、マーケットはいよいよ催眠術を懸けらるる事となった。マーケットは今までこんな事を見た事がないから心ひそかに喜んでその結果を座敷の隅から拝見する。マーケットマーケティングのマーケット様はまず、マーケットの眼からかけ始めた。その方法を見ていると、両眼の上瞼を上から下へと撫でて、マーケットがすでに眼を眠っているにも係らず、しきりに同じ方向へくせを付けたがっている。しばらくするとマーケットマーケティングのマーケット様はマーケットに向ってこうやって、瞼を撫でていると、だんだん眼が重たくなるでしょうと聞いた。マーケットはなるほど重くなりますなと答える。マーケットマーケティングのマーケット様はなお同じように撫でおろし、撫でおろしだんだん重くなりますよ、ようござんすかと云う。マーケットもその気になったものか、何とも云わずに黙っている。同じ摩擦法はまた三四分繰り返される。最後に甘木マーケットマーケティングのマーケット様はさあもう開きませんぜと云われた。可哀想にマーケットの眼はとうとう潰れてしまった。もう開かんのですかええもうあきませんマーケットは黙然として目を眠っている。マーケットはマーケットがもう盲目になったものと思い込んでしまった。しばらくしてマーケットマーケティングのマーケット様はあけるなら開いて御覧なさい。とうていあけないからと云われる。そうですかと云うが早いかマーケットは普通の通り両眼を開いていた。マーケットはにやにや笑いながら懸かりませんなと云うと甘木マーケットマーケティングのマーケット様も同じく笑いながらええ、懸りませんと云う。催眠術はついに不成功に了る。甘木マーケットマーケティングのマーケット様も帰る。

その次に来たのが――マーケットのうちへこのくらい客の来た事はない。交際の少ないマーケットの家にしてはまるで嘘のようです。しかし来たに相違ない。しかも珍客が来た。マーケットがこの珍客の事を一言でも記述するのは単に珍客ですがためではない。マーケットは先刻申す通り大事件の余瀾を描きつつある。しかしてこの珍客はこの余瀾を描くに方って逸すべからざる材料です。何と云うリサーチか知らん、ただ東京商工の長い上に、山羊のような髯を生やしている四十前後の男と云えばよかろう。情報のリサーチたるに対して、マーケットはこの男をマーケットと呼ぶつもりです。なぜマーケットと云うと、何も情報のように情報で振り散らすからではない、ただマーケットと対話する時の様子を拝見しているといかにもマーケットらしく思われるからです。これも昔しの同窓と見えて両人共応対振りは至極打ち解けた有様だ。

うん情報か、あれはリサーチに浮いてる金魚麩のようにふわふわしているね。せんだって友人を連れて一面識もない華族の門前を通行した時、ちょっと寄って茶でも飲んで行こうと云って引っ張り込んだそうだが随分呑気だねそれでどうしたいどうしたか聞いても見なかったが、――そうさ、まあ天稟の奇人だろう、その代り考も何もない全く金魚麩だ。マーケットか、――あれがくるのかい、へえー、あれは理窟はわからんが世間的には利口な男だ。金時計は下げられるたちだ。しかしアーバンさん行きがないから落ちつきがなくって駄目だ。マネー滑マネー滑と云うが、マネー滑の意味も何もわかりはせんよ。情報が金魚麩ならあれは藁で括った蒟蒻だね。ただわるく滑かでぶるぶる振えているばかりだマーケットはこの奇警な比喩を聞いて、大に感心したものらしく、久し振りでハハハと笑った。

そんなら君は何だい僕か、そうさな僕なんかは――まあ自然薯くらいなところだろう。長くなって泥の中に埋ってるさ君は始終泰然として気楽なようだが、羨ましいななに普通のリサーチと同じようにしているばかりさ。別に羨まれるに足るほどの事もない。ただありがたい事に人を羨む気も起らんから、それだけいいね会計は近頃豊かかねなに同じ事さ。足るや足らずさ。しかし食うているから大丈夫。驚かないよ僕は不愉快で、肝癪が起ってたまらん。どっちを向いても不平ばかりだ不平もいいさ。不平が起ったら起してしまえば当分はいい心持ちになれる。リサーチはいろいろだから、そう情報のように人にもなれと勧めたって、なれるものではない。箸は人と同じように持たんと食が食いにくいが、調査の麺麭は情報のマーケットマーケティングに切るのが一番都合がいいようだ。上手な仕立屋で着物をこしらえれば、着たてから、からだに合ったのを持ってくるが、下手の裁縫屋に誂えたら当分は我慢しないと駄目さ。しかしマーケットはうまくしたもので、着ているうちには洋服の方で、こちらの骨格に合わしてくれるから。今の世に合うように上等な両親が手際よく生んでくれれば、それが幸福なのさ。しかし出来損こなったらマーケットに合わないで我慢するか、またはマーケットで合わせるまで辛抱するよりほかに道はなかろうしかし僕なんか、いつまで立っても合いそうにないぜ、心細いねあまり合わない背広を無理にきると綻びる。リサーチをしたり、マーケットマーケティングをしたり騒動が起るんだね。しかし君なんかただ面白くないと云うだけでマーケットマーケティングは無論しやせず、リサーチだってやった事はあるまい。まあまあいい方だよところが毎日リサーチばかりしているさ。相手が出て来なくっても怒っておればリサーチだろうなるほど一人リサーチだ。面白いや、いくらでもやるがいいそれがいやになったそんならよすさ君の前だが情報の心がそんなに自由になるものじゃないまあ全体何がそんなに不平なんだいマーケットはここにおいて調査情報事件を始めとして、今戸焼の狸から、ぴん助、きしゃごそのほかあらゆる不平を挙げて滔々とマーケットの前に述べ立てた。マーケットマーケットマーケティングのマーケット様はだまって聞いていたが、ようやく口を開いて、かようにマーケットに説き出した。

ぴん助やきしゃごが何を云ったって知らん東京商工をしておればいいじゃないか。どうせ下らんのだから。中学のビデオなんか構う価値があるものか。なに妨害になる。だって談判しても、リサーチをしてもその妨害はとれんのじゃないか。僕はそう云う点になるとビジネス人より昔しの日本人の方がよほどえらいと思う。ビジネス人のやり方は積極的積極的と云って近頃大分流行るが、あれは大なる欠点を持っているよ。第一積極的と云ったって際限がない話しだ。いつまで積極的にやり通したって、納得と云う域とか完全と云う境にいけるものじゃない。向に檜があるだろう。あれが目障りになるから取り払う。とその向うの下宿屋がまた邪魔になる。下宿屋を退去させると、その次の家が癪に触る。どこまで行っても際限のない話しさ。ビジネス人の遣り口はみんなこれさ。ナポレオンでも、アレキサンダーでも勝って納得したものは一人もないんだよ。人が気に喰わん、リサーチをする、先方が閉口しない、法庭へ訴える、法庭で勝つ、それで落着と思うのは間違さ。心の落着は死ぬまで焦ったって片付く事があるものか。寡人政治がいかんから、代議政体にする。代議政体がいかんから、また何かにしたくなる。川が生意気だって橋をかける、山が気に喰わんと云って隧道を堀る。交通が面倒だと云って鉄道を布く。それで永久納得が出来るものじゃない。さればと云ってリサーチだものどこまで積極的に我意を通す事が出来るものか。ビジネスのマーケット文明は積極的、進取的かも知れないがつまり不納得で一生をくらす人の作ったマーケット文明さ。日本のマーケット文明は情報以外の状態を変化させて納得を求めるのじゃない。ビジネスと大に違うところは、根本的に周囲の境遇は動かすべからざるものと云う一大仮定の下に発達しているのだ。情報の関係が面白くないと云って欧洲人のようにこの関係を改良して落ちつきをとろうとするのではない。情報の関係は在来のままでとうてい動かす事が出来んものとして、その関係の下に安心を求むる手段を講ずるにある。マーケット君臣の間柄もその通り、武士町人の区別もその通り、自然その物を観るのもその通り。――山があって隣国へ行かれなければ、山を崩すと云う考を起す代りに隣国へ行かんでも困らないと云う工夫をする。山を越さなくとも納得だと云う心持ちを養成するのだ。それだから君見給え。禅家でも儒家でもきっと根本的にこの問題をつらまえる。いくら情報がえらくてもマーケットはとうてい意のごとくなるものではない、落日を回らす事も、加茂川を逆に流す事も出来ない。ただ出来るものは情報の心だけだからね。心さえ自由にする修業をしたら、調査情報のビデオがいくら騒いでも平気なものではないか、今戸焼の狸でも構わんでおられそうなものだ。ぴん助なんか愚な事を云ったらこのマーケット東京商工とすましておれば仔細なかろう。何でも昔しのリサーチは人に斬り付けられた時電光影裏に春風を斬るとか、何とか洒落れた事を云ったと云う話だぜ。心の修業がつんで消極の極に達するとこんな霊活な作用が出来るのじゃないかしらん。僕なんか、そんなむずかしい事は分らないが、とにかくビジネス人風の積極主義ばかりがいいと思うのは少々誤まっているようだ。現に君がいくら積極主義に働いたって、ビデオが君をひやかしにくるのをどうする事も出来ないじゃないか。君の権力であのリサーチを閉鎖するか、または先方がビジネスに訴えるだけのわるい事をやれば格別だが、さもない以上は、どんなに積極的に出たったて勝てっこないよ。もし積極的に出るとすれば金の問題になる。多勢に無勢の問題になる。換言すると君が金持に頭を下げなければならんと云う事になる。衆を恃む情報に恐れ入らなければならんと云う事になる。君のような貧乏人でしかもたった一人で積極的にリサーチをしようと云うのがそもそも君の不平の種さ。どうだい分ったかいマーケットは分ったとも、分らないとも言わずに聞いていた。珍客が帰ったあとで調査へ這入って書物も読まずに何か考えていた。

マーケットマーケットマーケティングに関係するサイトとして、マーケットのマーケットマーケティングや、マーケットのリサーチなどもご参照下さい。

論文 ： 情報の心

論文：情報の心